代表取締役等の住所非表示の申出 

こんにちは。横浜市港北区の女性司法書士、島袋裕子です😊

今年も残すところあと2か月を切りましたね!
師走の予定もチラホラ入り始めて、若干焦りはじめています。

さて、今日は令和6年10月1日から開始された、代表取締役等の住所非表示の措置についてです。
新しい制度ですが、株式会社設立登記の際にはご案内する必要があるため、私も既に何度もご依頼者にご説明しているところです。

こちらは、簡単に言うと、登記簿に掲載されている代表取締役等(代表取締役、代表執行役、代表清算人)の住所の一部を非表示にできるという制度です。

士業としては正直やめてくれ~という声が多かったこの制度。
とはいえ、やはり個人情報保護、プライバシー保護の点から自宅の住所が公開されるのは抵抗があるというのは当然です。

経営者の方の関心も高く、お問合せいただくこともありますので、制度の注意点をまとめたいと思います。

1.対象は「株式会社」のみ。
 合同会社や一般社団法人では非表示にできません。

2.自動的に住所が非表示になるわけではなく、法務局に申出をする必要があります。

3.住所が全部非表示になるわけではなく、市区町村まで(東京都においては特別区まで、指定都市においては区まで)記載されます。

例 
非表示前 「東京都港区六本木一丁目1番1号
      代表取締役 甲 野 太 郎」
非表示後 「東京都港区
      代表取締役 甲 野 太 郎」

このように、港区以降の「六本木一丁目1番1号」が非表示になります。
港区に住所があることはわかってしまいます。

4.現在のところ、申出のみすることはできず、登記申請と同時にする必要があります。

5.申出ができる登記は、現在は以下の4つです。
 ・設立 ・管轄外への本店移転 ・代表取締役等の就任(重任) ・代表取締役等の住所変更

 取締役の任期が10年の会社さんですと、申出の機会が少ないですね。

6.過去に既に登記されている住所は非表示になりません。
 5の代表取締役の重任登記のタイミングになり、ようやく非表示の申出をしたとしても、登記簿では申出以降の住所が非表示になるだけで、下記のように登記されます。

元の登記簿

東京都港区六本木一丁目1番1号                        令和4年10月30日重任
代表取締役 甲 野 太 郎 令和4年11月10日登記

令和6年の重任登記と同時に非表示の申出をした場合

東京都港区六本木一丁目1番1号                        令和4年10月30日重任
代表取締役 甲 野 太 郎                          令和4年11月10日登記
東京都港区                                  令和6年10月30日重任
代表取締役 甲 野 太 郎                          令和6年11月10日登記

申出以降の部分では港区以降が表示されなくなりますが、以前登記された部分は下線が引かれるのみになります。
やらないよりもいいかもしれせんが、ちょっと微妙ですよね。

<デメリット>

法務省のHPでは、非表示制度を検討する方への注意メッセージが、赤字で下記のように記載されています。

※ 注意 ※
 代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の影響が生じることが想定されます。
そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分な御検討をお願いいたします。

 代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、会社法(平成17年法律第86号)に規定する登記義務が免除されるわけではないため、代表取締役等の住所に変更が生じた場合には、その旨の登記の申請をする必要があります。

 代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、登記の申請書には代表取締役等の住所を記載する必要があるため、登記されている住所について失念することのないよう御留意ください。
(抜粋ここまで)

まだ始まったばかりの制度ということで、これからデメリットが明確になってくると思われます。

また、申出をするための添付書類の一部として、上場会社以外では「株式会社の本店所在地における実在性を証する書面」が必要とされており、きちんとした準備が必要になります。

代表取締役等の住所非表示措置をご希望される方は、できれば専門家にご相談していただき、ご検討いただければと思います。

商業登記の旧氏併記が始まった際には、登記申請と同時にしか旧氏併記の申出ができませんでした。
利用率が上がったからなのか、要望が多かったからかはわかりませんが、その後申出単体でもできるようになりました。
この住所非表示の申出も、反響によっては申出だけでも可能になっていくのかなと個人的には思っています。