遺言の種類と自筆証書遺言保管制度について

こんにちは☺横浜市港北区菊名の女性司法書士、島袋裕子です。
気が付いたら今日は7月最終日です!
開業してから3か月が過ぎましたが、あっという間でした。

さて、最近お問い合わせが増えている、「遺言」についてです。

遺言書にはいくつかの種類があり、それぞれに長所と短所があります。
主に使われている遺言書は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」が多く、その特徴は下記のとおりです。

1. 自筆証書遺言
特徴: 遺言者が遺言内容を全て手書きし、署名・押印を行う。
長所: 簡便で費用がかからない。
    自由に作成・修正が可能。
短所: 不備があると無効になる可能性がある。
    発見されずに埋もれてしまうリスクがある。
    内容の信頼性が低い場合がある(偽造の可能性)。

2. 公正証書遺言
特徴: 公証人が作成する遺言書で、遺言者が内容を口述し、証人とともに公証人が内容を確認し作成する。
長所: 公証人が関与するため、法的な有効性が高い。
    保管が確実で、紛失や偽造のリスクが低い。
    遺言者の意思が明確に反映される。
短所: 作成に手間がかかり、費用が発生する。
    証人が必要で、プライバシーが守られにくい。


自筆証書遺言の欠点を補おうと、2020年に「自筆証書遺言保管制度」ができました。
これは、自身で作成した遺言書(自筆証書遺言)を法務局に保管する制度です。

・遺言者が自筆証書遺言を作成し、法務局に保管を申請します
・遺言書は原本に加え、画像データとしても長期間適正に管理されます
・管理期間は原本が遺言者死亡後50年間、画像データは遺言者死亡後150年間です
・遺言書の保管申請時には、民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて、遺言書保管官の外形的なチェックが受けられます

メリットは
・遺言書の紛失や改ざんのリスクがない: 法務局が遺言書を保管するため、遺言書を紛失するおそれがありません。
また、相続人などに遺言書を改ざんされたり、隠されたりするおそれもないありません。
・遺言書の形式面での不備をチェックできる: 自筆証書遺言書保管制度を利用する際、遺言書の形式面の不備がないかを法務局にチェックしてもらえます。
・検認手続きが不要になる: 自筆証書遺言書保管制度を利用すると、検認手続きが不要になります。
・遺言書の存在を相続人に通知してもらえる: 自筆証書遺言書保管制度を利用すると、相続開始後に、遺言書が法務局に保管されていることを相続人などに通知してもらえます。
・相続人が全国の法務局で遺言書を閲覧できる: 法務局で保管された遺言書は、スキャナーで読み取られて、画像情報として法務局のデータベースにも保管されます。 そのため、遠隔地に住む相続人でも、遺言書の原本を預けた法務局に赴く必要はなく、自宅近隣の法務局で遺言書の中身を閲覧できます。

デメリットとしては、
・保管できる法務局は決まっている: 全国の法務局で遺言書の保管を扱っているわけではなく、特定の法務局でのみ遺言書の保管をしています。
・本人が法務局に行く必要がある: 遺言者が自筆証書遺言の保管制度を利用する場合、遺言書保管所に自ら行く必要があります。家族が代理人として保管申請をすることも認められていません。
・写真付きの本人確認証明書が必要: 遺言書を保管する際に本人確認をするのですが、写真付きの本人確認証明書を提示する必要があります。
・遺言書の様式等に定めがある: 自筆証書遺言ならすべて保管できるわけではなく、様式等のルールを守っている遺言書のみ保管できます。
・内容の確認はしてくれない: 自筆証書遺言を保管する際に、法務局は遺言書の形式面のみをチェックします。たとえ遺言書の内容に問題があっても、指摘することなく黙って受け取るだけです。
・氏名や住所等の変更届が面倒: 自筆証書遺言を遺言書保管所に保管する際に、氏名や住所等を登録することになります。登録した情報に変更があると、変更の届出をする必要があります。

自筆証書遺言保管制度は、手数料も安いですが、それなりのデメリットがあります。
内容面の審査はないので、遺言者の本当の意思が遺言書で表現されているか、それが実現可能なものなのか、までは担保されません。
こちらの制度を使われる方も、専門家に事前に相談されることをお勧めいたします。

当事務所では、遺言者の方の状況に応じて適切な遺言作成をサポートしております。
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